Fiction Factory

ゲーム実況風プレイ日記&考察中心 常にネタバレ注意
果て
 「ちっ、なんだよこれ」

やっと少年の時期を抜けたばかりの青年が、足元の黒い何かを蹴った。その【何か】
は紙屑のように宙に舞い、そして灰のように静かに消える。立ち上る腐敗臭が、青
年の顔をゆがめた。「ったく、なんで俺がこんなところ……」あたりを見回しても
生きているものは見当たらない。「何にもねーよ。これじゃあ稼ぎもくそも」言い
かけたところで、かすかに風とは別の空気の揺れを感じとる。

 「誰かいるのか!」聞こえた音の方に駆け寄ると、少女が【何か】を見つめたま
まうずくまって震えているのを見つけた。「だれ?」青年を見つけた少女が、涙を
浮かべながら尋ねる。

 「安心しろ、俺はおまえたちを助けに来たんだ。ほかに生きてるやつはいるか?」
少女は首を横に振った。「私以外はみんな死んだ。みんな、私のせい」表情のない声
が少女の口から洩れる。「おまえ、いくつだ?俺とさほど変わらないようだが。一応、
そういうデータも必要だから」青年は極めて淡々と話しを進めた。「18。ねえ、私を
助けて、それからどうするの」少女が答えると、青年はデータを入力しながら「俺と
ほとんど変わんないじゃん……」とだけ返した。

 「ねえ、どうするの」少女は再び青年に答えを求める。「知らねーよ。俺はデータ
作るだけの下っ端だし、上が何考えてるかなんてこと、教えてもらえねーんだよ」鼻
息を吐いて少女をにらみつけた。

 「俺だって仕事で来てるんだ。こんなとこ、さっさとおさらばしたいさ。おまえだ
ってここにずっといたくはねーだろ。くっさいしよ。それになんだこの黒いぼろぼろ
はよ?」そこらじゅうに転がる【何か】を顎で指す。

 「これは、私がやったの。全部、ここに住んでた人」暗いトーンで少女は打ち明け
た。「へえ、最近の女の子はずいぶん進化したもんだ。こりゃ戦争に連れて行きたい
とかいう連中がいるのも無理ねーわ」青年は少女の告白を軽く受け流したが、少女は
青年の言葉を聞いてびくりと体を震わせた。

 「せん……そう……」少女はその言葉を繰り返す。「そうだよ。けどな、魔女じゃ
あるめーし、おまえの話だって信じちゃいねーよ。みんなこのくっさい臭いで頭がい
かれてるだけだ。おまえもここから抜け出せばその変な妄想癖もすぐ治る」データを
入力し終えて、「ほら、さっさと行くぞ。鼻が曲がりそうだ」少女の腕をつかもうと
したとき。

 「触らないで!!!」頭に響く高い音が、青年を貫いた。驚いて腕を降ろすと、少
女は声を荒げて言い放つ。「触らないで。信じなくてもいい。でも、触らないで。私
は行かない。どこにも行かない。どこにも行けないの!」青年は怪訝な表情を浮かべ
たものの、もう一度少女の腕を掴もうとして、今度は成功した。

 「おまえを助けるのも仕事のうちなんだよ。じゃないと給料もらえないからな」少
女は青年の腕を必死で振りほどこうとしたが、力ではかなわない。そして、数メート
ル歩いたところで、青年は動きを止めた。

 「だから、ダメだって言ったのに」

 少女の目には涙が浮かび、そして頬を伝って地にたどりつく。青年は全身が腐敗し、
黒い【何か】になっていた。
関連記事
Comment
≪この記事へのコメント≫
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 
Trackback
この記事のトラックバックURL
≪この記事へのトラックバック≫
Designed by aykm.