Fiction Factory

ゲーム実況風プレイ日記&考察中心 常にネタバレ注意
時の残滓 第19話
歩き疲れていたはずなのに続いた勝負は、ほとんど私の1人負け状態だった。
確かに、懸案事項で思い悩んでいる場合、ときにはこういう簡単な頭の体操
というのは有効だろう。実際にそうなったのだから。

一応、言い訳しておくと、ラギはアバロンで故意以外では負けたことがない
らしい、というのを後から聞いた。私はと言えば、最初こそ乗り気ではなか
ったものの延々と負け続けるうちにだんだんと負けん気が湧いてきたのか、
結局ラギのストップがかかるまで続いてしまった次第だ。

それでも、一度は引き分けにまで持ち込めた。とはいえ、アバロンでは引き
分けにするのはそれほど難しくはなく、むしろ初心者がよくとる方法の一つ
になっている。

つまり、戦略勝ちしたとは到底言えたものではなかったのだ。

翌朝、私はすぐ隣で静かに寝息を立てるラギを起こさないように抜け出すと、
まだ涼しい外の風が私の体をするりと撫でていくのを感じた。窓が開いてい
る。夜は寒い砂漠の中だと言うのに。

寝ぼけながらベッドに座って心地よい空気を吸い込みながら窓の外を眺める。

と、目が覚めたときには朝日が射していたはずの部屋の中は一瞬で真っ暗に
なった。「え?」気づいた時には、もう遅い。もはや伴侶にもなりつつある、
あの頭痛が私に襲いかかる。

でも、もう朝なのに。いや、実際は起きたこと自体もまだ夢の中なのかもし
れないけれども。「どうして?」聞こえてきたのは、やはりあの少女の声だ。
どこか懐かしいような怖ろしい声。今回は、どこか悲しみを帯びている。よ
くわからないが、少女の感情が直接私の中に流れ込んでくるのがわかる。

瞬きをしても、部屋の暗さは変わらない。闇の中に光は一切なく、隣にいた
はずのラギの存在も、手を伸ばしてみたが感じることはできなかった。「ど
うして?何が?」

姿は見えないけれども、気配は感じられる。声の方向に向かって出した声は、
喉の奥から絞り出すかのようにかすかなもので、自分でもほとんど聞き取れ
ないほどだった。

「あなたは、あの子といくのを決めた。あなたはまだ知らない。自分がどう
なるか。わたしは、許さない。あなたをあいつに渡すわけにはいかない」よ
くわからない。伝わるのは、少女の怒りと恐怖だけ。言葉は意味をなさない。

少女の言葉は、ただ私の体を伝うだけで、避雷針になったかのように意味は
闇に飲み込まれていく。少女が何か話すたびに、頭痛が酷くなる。締め付け
られるような痛みに、私は自分の悲鳴を聞いた。

それでもラギの気配は感じられない。ラギは、起きているのだろうか?あい
つというのは、ラギのことだろうか。質問する余力もない。「教えてもいい。
あなたが知りたければ。わたしはあなたを拒みはしない。だから」私はもう、
声を出すことが許されなかった。

声を出そうとすると、またあの頭痛だ。私は口を動かす代わりに、首を縦に
振った。あちらの感情が私に伝わるのなら、私もあちらになんらかの影響を
与えているはずだ。公算は間違ってはいなかった。

「そう。あなたにわかるか、わたしにはわからない。理解できる保証はしな
い。それでもいいなら」少女は暗いトーンで話しかけてくる。そうして、気
配を消したのか、少女の感情は私から抜けていった。

一瞬の間の内に、私の体は燃えるような熱さを帯びていく。そして、酷い悲
しみと恐怖が感情をゆすり動かした。泣いているのか、怒っているのか、怯
えているのか。ごちゃまぜになった心が、私を壊していくのを感じた。

崩れていく私を誰かが両腕で抱え込む。そして、頭痛は激しさを増し、全身
にその痛みが波及していくのを感じて、悲鳴はもはや声にもならないものに
変じていた。

もう最大限までの叫び声をあげた、と思ったところで熱や痛みは消えていく。
そして、再び少女の気配が私の体を伝ってくる。「やっぱり、あなたはまだ
わからない。これがどういう状況なのかが。それでも……あの子といくと決
めているのは、一体どうして?」その問いに答える前に、私は暗闇から解放
された。

遠くから、大声で私の仮の名を叫ぶのが聞こえる。隣で寝ていたはずのラギ
は、額に汗を浮かべて私を覗きこんでいた。
関連記事
Comment
≪この記事へのコメント≫
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 
Trackback
この記事のトラックバックURL
≪この記事へのトラックバック≫
Designed by aykm.