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ゲーム実況風プレイ日記&考察中心 常にネタバレ注意
時の残滓 第17話
商店街はドーム型の屋根が空を覆い、薄暗い中で呼び込みの声が響き渡る。砂地
で昼夜の温度差が激しいとはいうものの、まだ時間的には暑い時間帯だ。それに
も関らず商店街のメインストリートは涼しい。どうやら商店街は空調が効いてい
るらしく、汗だくになって歩き回る必要はないようだ。そして言語については相
変わらず私には理解できず、ラギにほとんどをまかせる以外に選択肢はなかった。

商店街でまず探すべきは服だ。ラギも言っていたようにいくらポンチョでマシに
は見えてもやはりボロボロのワンピースと丁寧な装飾の布地の組み合わせははた
から見ても目立って仕方がない。

少なくとも服を選ぶ権利は私にあったはずだ。だが、ラギは店から備品のメジャー
を借りて奥にあった更衣室に私を強引にも押し込み、手慣れた様子で着ていたポ
ンチョとボロボロのワンピースを脱がしにかかる。私が口を開いて抗議を上げよ
うとするのも構わず、サイズを計って足元に広がったワンピースとポンチョを抱
え、1人で更衣室から飛び出した。

まったく、騒々しい人だ。ワンピースもポンチョもなかったら更衣室から出られ
ないじゃないか。何を考えているのやら。しばらくラギの行動に疑問符を浮かべ、
更衣室で待っていると、勢いよくカーテンが開く。

予想外のラギの行動に私は目を白黒させて情けないことに小さな悲鳴を上げる羽
目になった。そんな私に全く反応するそぶりも見せず、彼女はおもむろに手に持
った薄い水色の布を広げ、私に頭からベールのように被せ掛けたのだ。

すると、身長ほどもある大きな布はするりと私の頭を通り抜け、首元で止まり、
ぴったりと私の体に纏わりついた。ひんやりと冷たく、さらさらとした手触り
のそれがラギの手によって腰の部分に細い皮ベルトを軽く巻きつけられる。

袖のないドレスのような布は私の腰から下で広がり綺麗なラインを形作った。
生まれてからドレスを着るような機会がなかった私は少し気恥ずかしさが湧い
て頬に火照りを感じてくる。

そして、更衣室に付属していたたくさんのボタンの内の一つをラギが触ると、
薄い水色の布地はあっという間にひと揃いのTシャツとズボンになった。袖の
広いTシャツはこの地域でのいわば民俗衣装のようなもので商店街で見かける
女性は大概似たようなものを着ていたのを思い出す。

ズボンの方はラギは動きやすいハーフパンツタイプだったが私のものは足首
までの長さで先が絞られたカーゴパンツだ。いつの間にかショートブーツも
更衣室の外に用意されている。

薄いベージュのTシャツの袖には濃褐色の蔓が絡み合うように描かれ、単色
のラギのTシャツとはまた違うものだった。そうして簡単な服を買うと、今
度は用途いろいろのポンチョを探し始める。

これは私が選んだのだが、ここの人間が使うポンチョはいずれも少しずっし
りしていて防弾と防刃、そして空調と収納を兼ねている。ラギのものはずい
ぶん古いのだそうで空調機能が故障していたということを後になって知った。

通貨はダカットでこれまた古い歴史があるのだそうだが、これだけ文明が発
展しているのに未だに現金主体で物流が行われているなんて驚きだ。そうこ
ぼすとラギは苦笑して、「ここの文明はまだ上の連中からの影響が強いだけ
だからね」私の手を引くのだった。

上の連中、ということはやはり私は上から落ちてきたのだろうか。それに仮
にここが上の文明の影響が強いのなら何故こうも言語やら通貨が異なるのか。

「ああ、ほんとに知らないんだ?うちらは結構知ってるつもりだったけど。
言語が違うのは、あんたが何も知らないのと一緒で、うちらも一部を除いて
上と交流がないからだよ。お昼食べた店を覚えてる?」

頭を縦に振って答える。ラギと親しそうにしていた男性の言葉は私にも理解
できたし、料理の説明もしてくれていた。

「それなら、ラギたちは上と交流があるってことか」言われなくともそれは
予想がつく。問題は何故上の人間に下の人間の話が一切出てこないの
かだ。ここには一切私の知っている言語で書かれた文字がない。上と下の地
域で交流があるのなら、その点は疑問になってしかるべきだ。

「そういうこと」私がラギの説明を納得したと思ったのか、彼女はそれ以上
ここでは何も言わなかった。

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