Fiction Factory

ゲーム実況風プレイ日記&考察中心 常にネタバレ注意
時の残滓 第16話
買い物をするのに、白いワンピース――しかも乾いた泥で汚れてボロボロの――
では不都合だということで、ラギのポンチョを借りることになった。よく見ると
ほとんど透明に近い糸で雪の結晶と荊が複雑に絡まった刺繍が一面に施してある。
浅葱色のそれを外したラギは、ゆったりとした袖がスカートのようにひらひらと
広がるのクリーム色のTシャツから、女性にしては筋肉質な白い腕を晒していた。

「とりあえずはそれでいいでしょ。ちょっと暑いけど」

Tシャツの腰の部分には革ベルトでひと振りのナイフが下がっている。そのつもり
はなかったのだが視線はそちらに向いていたのか、ラギはナイフを手にとって私
に手渡す。

「え?」

わけがわからず、しばらくそのナイフを握りしめてのんきに突っ立っていた。ラギ
は、にっと笑ったかと思うとナイフを指して、見られたらまずいから、と私の腰に
ナイフを下げる。

「あんたに預けとく。さあ行こう」

ここは一体どういうところなのだろう?一般人が――ラギが一般人かどうかは知ら
ないが――ナイフを常備しないといけないような場所なんだろうか。そしてそれを
見られてはいけないとなれば、それはどういう意味なのだろうか。疑問は浮かぶば
かりで何一つ解決しなかった。

「ラギ、ナイフなんてどうしろと?」

聞いてみる。なんだ、そんなことかとラギは肩をすくめ一息吐くとこう説明した。
なんでも、ここでは野生動物と移民が多く、毎日なんらかの犯罪や事件に巻き込ま
れることが多いのだと言う。そして、ナイフは自衛のためではあるが人前で見せび
らかすのはマナー違反と同時に自分の弱点を晒すようなものなのだ。

それだけさらりと説明したのち、ラギは砂漠の道なき道を先導し始めた。十分ほど
歩いたところで商店街にたどり着く。文字は読めない。会話もほとんど聞き取れな
かった。

ラギはこの度、商店街では何も買わずに通り抜ける。その先に小ぶりのログハウス
を見つけると嬉々として店の扉にかかる呼び鈴を鳴らした。30代前半ほどのひげを
生やした男性が、黒いエプロンをかけて扉から顔を出す。

浅黒い肌に短く刈り込んだ黒い髪の毛をしたその男性は、ラギを見るなり嬉しそう
に抱き合って挨拶を交わす。何が何だかわからない私はただそれを見ていたが、ラ
ギは軽く男性に何か言うと私を手招きして中へ入るよう促した。

「待ってな、先に飯だ!ここのはうまいんだよ。あたしのお墨付きだかんね!!
あんたの口に合うかは知らないけど」

運ばれてきた料理は、辛くて私の口にはあまり合わなかった。薄くて甘くないクレ
ープに、レタス、赤いソースのかかったチキンの素揚げが乗っかり、その上に知ら
ない果物――パイナップルというらしい――を散らして巻いて食べる。

そこに氷をトールサイズのコップいっぱいに積み重ね、その中には赤くて甘い液体
がたっぷり注がれた飲み物が添えられる。食事をそこそこに、私はそればかり口に
して胃の腑に納めていく。

それでも何とかお腹を膨らませると、ようやく重い腰を上げて商店街へ戻ることに
なったものの、よくよく考えてみれば持ち合わせが全くない――そもそもここでの
通貨さえ知らない――という点を今更ながら自覚しないわけにはいかないのだった。
つまり、私は無一文で白いワンピースだけを身にまとってここに来たということだ。

ラギはお金を探そうとしてがっかりする私を笑いながら慰めると、店の主人にツケ
ておくよう言い残し、私にはまた機会があったらでいいと言ってくれた。店の主人
は私たちの言葉を理解していたようだ。

「ほら、買い物しないと。暗くなっちゃうかんね」

ようやく朝昼兼用の食事が終わったころには、太陽はすでに傾きかけて暑い盛りの
時間に差し掛かっていた。夕方には店が閉まってしまう。そしてここは一日が短い
のだ。だから急いで店を出て、商店街へと繰り出した。
関連記事
Comment
≪この記事へのコメント≫
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010/06/30(水) 23:54:55 | | #[ 編集]
Re: タイトルなし
なぜようやく、という表現になったかはツイッターでも書いた通りで実はワンシーン書くの忘れてたんですよね;;
まあ不要っちゃ不要なシーンだったし後で入れることも可能ですのでいいかなぁと。ブランチは世界観には遭うのかなぁ?ちょっとまだ世界背景の設定がちゃんとしてなくてキャラクターの設定だけでいっぱいいっぱいな点がありますね。補足の説明になりますが一応上の世界はFF13と同レベルくらいに考えてますがもっと西洋的なイメージが強いです。逆に下の世界は日本に近い設定になっていたりするのでややこしいですねぇ。自分で書いておきながらw
見られてマズイっていうのはなんだろうなぁ?
とにかく終わらせることを重視して書いているので細かいとこ気に
しなさすぎですw
いつもそんな感じですが←ぇ
2010/07/04(日) 23:30:32 | URL | ビスタ #.qanGQko[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 
Trackback
この記事のトラックバックURL
≪この記事へのトラックバック≫
Designed by aykm.