Fiction Factory

ゲーム実況風プレイ日記&考察中心 常にネタバレ注意
時の残滓 第11話
酷いありさまだ。


「ぁ!……ぅ」


中では、女性が男に殴られて声にならない悲鳴を上げていた。金属製の小ぶり
の洗面器のようなものを男が彼女の身体のいたるところに叩きつけている。

女性の膝までかかりそうなほど長い黒髪は、地下の埃と湿気で酷く絡まり合っ
ていた。それでも、薄暗い光のもとに照らされた髪の色は神秘的なほど綺麗な
色をしていて。

視界の冴えない光の下でもこれほど美麗な色を見てとれるなら、日の光に晒し
て、手入れをしたら相当見栄えのするものになるだろう。


「ふん、面倒かけやがって。てめぇはおとなしく俺たちのいいなりになってりゃ
 いいんだ」


男は、さんざん殴られてぐったりと壁によりかかった女性に向かってそう吐き
捨てた。女性にぶつけていた洗面器はでこぼこにひしゃげている。女性は殴る
のをやめた男を色を失った瞳で見上げた。


「何見てやがんだ!!また殴られてぇのかっ」


男の拳が上がる。


「やめてくださいっ!これ以上やったら上に報告しますよ!!」


どうやらもう一人、女性がいたようだ。男が振り上げた腕を止めに入る。男は
その女性を睨みつけた。


「お願いします!」


懇願している女性も、長い髪をしていた。ただ、黒髪の女性とは違い、髪の毛
は後ろで束ねてある。そしてよく見ると眼鏡をかけているようだ。髪の色は茶
系だろうか?暗くてハッキリした色はよくわからないが。

なんとなく見覚えがあるような色だとは思った。


「あー、くそっ!わかった、わかった。放せっつの」


男は面倒くさそうに茶髪の女性を振り払い、扉に手をかける――。私は咄嗟に
扉の陰に隠れた。私の姿に気がつくことなく、男はその場を去っていく。


「ごめんね、ベルメール……わたし……」


男が完全に消え去った後、先ほどの茶髪の女性の声が聞こえたので再び先ほど
の部屋に視線を移した。黒髪の女性はベルメールというのか。


「トリア……」


トリアと呼ばれた女性は壁にヘタり掛っていたベルメールを横抱きして彼女の
髪をさわさわと撫でている。ベルメールの方は、彼女を包むトリアの腕を両手
で軽く抱えて、気持ち良さそうに瞼を閉じていた。


ベルメールの安心しきった表情は、まるで……小さな子供が母親に抱かれてい
るような、そういう表情だ。見ているこちらもほっとしてしまうほど、穏やか
で。ほんの少し、羨ましくもあった。


「ベルメール、聞いてくれる?」


その状態でトリアはベルメールに尋ねる。ベルメールも目を閉じたまま小さく
頷いた。


「わたしね、決めたんだ。大丈夫、なんとかなるから。絶対に、あなたを傷
 つけたりしない。だって、そうでしょ?そのために、わたしはずっとここで
 あなたと一緒にいたのだから」


トリアは、優しい声色でベルメールに話し始める。


「うん」


トリアの腕の中でベルメールは応えた。トリアはベルメールから腕を外すと、
ベルメールの正面に回り込み、彼女の両手首をぎゅっと掴んで顔を寄せる。


「ベルメール」


こちらから表情は窺えないものの、トリアの口調は強くなっているのはわか
る。一方で手首を掴まれた方のベルメールはきょとんとした顔でトリアを見
ていた。


「トリア……?トリアが大丈夫って言うなら、大丈夫だよ。トリアは嘘つい
 たことない。だから……大丈夫」


ベルメールの口調は、幼い印象を与える。見た目は20代半ばが妥当なと
ころだ。……かなり違和感があった。


「うん……。そうだよね。わたし、あなたのその言葉を聞かないと心配でた
 まらないの。ごめんね、弱虫で……」


そう言ってトリアはベルメールを今度は正面からしっかりと抱きしめる。彼
女が顔をベルメールの胸にうずめると、暗い牢獄からは小さく嗚咽が漏れ始
めた。


「泣いちゃだめだよ、トリア。トリアは何も悪いことしてない。弱虫なんか
 じゃないよ?さっきも、トリアがちゃんと助けてくれた。それじゃ、ダメ
 なの?」

ベルメールはトリアの背中をぽんぽんと軽くたたいている。なだめようとし
ているようだ。


「あ、トリア。そろそろ晩御飯の時間だよ?行かなくていいの?」


そして思い出したようにベルメールが言った。晩御飯?もうそんな時間なの
か。この階層に来てからずいぶんな時間が経ってしまっていたらしい。


興味本位でこんな場所に来てしまった手前、エニアを待たせてしまっていた
ら申し訳が立たない。しかたなく、私はその場を後にしてこの階層の入り口
――もともとの集合場所へと向かった。


話がひと段落ついたら、また書き出そうかと思います。主人公の口調が
安定しないのはなぜだろう?女性らしさを出しつつ強さのある口調って
いうのが欲しいんだけど、どんなかんじなのかなぁ;;
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