Fiction Factory

ゲーム実況風プレイ日記&考察中心 常にネタバレ注意
小ネタ すれ違いの話
あれから数カ月が経った。二人の影が、立ち止まる。そこにあるのは無音
だった。風が二人の髪を撫で、視界を遮る。風の音は聞こえない。二人の
間に音はない。

かわりに、赤く染まった街があった。無音に立つ二人の間に流れる時間は、
ただ赤を黒く変色させるだけで何の助けにもならない。

「おまえは、あいつじゃない」立ち止まった背の高い片方が、呟く。無音
の中での呟きは、幾重にも増大されて相手の耳に届いた。相手は無言のま
ま立っている。話し始めた片方が、それを見て続けた。

「全部、気付いてたんだ。おまえじゃない。僕が探していたのはおまえじゃ
ない」相手は、そちらの顔を見る。「気付いていたのか?」相手はうなづい
た。「知ってた」そう返す。

「僕は、あいつを見殺しにした。10年前、僕はあいつとケンカしたんだ。
 あいつは怒って出て行った。出ていってすぐ、玄関先で、僕の目の前で
 事故で死んだ」背の高い片方は、淡々と続けた。相手はじっとそれを見
ている。

「僕は、あいつが誰かに付きまとわれているのを知っていた。知ってて、
家から追い出した。全部、僕のせいだと、知っていたんだ。その事実から
逃げるために、あいつそっくりなおまえを、あいつだと思い込むことにし
た」そこまでいうと、背の高い方は考え込むようにうつむいた。

そこに背の低い方が続けた。「そう。わたしは、あの子じゃない。そして、
これは知ってたの?……あの子を殺したのはわたし。わたしはあの子じゃ
ないけれど、あの子はわたしだった」背の高い方は顔を上げて目を剥いて
いる。

「知らなかったんだ?わたしは、あなたがわたしをあの子だと思い込んで
演技していることも知っていたし、知った上でわたしも演技していた。わ
たしはあの子として生きた」

背の低い方は、夕日が沈むと同時に消えた。残された高い方は、色を失っ
た。暗闇に浮かぶ月は照らし出す。最後に視たのは、いないはずの




あの子だった。

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