Fiction Factory

ゲーム実況風プレイ日記&考察中心 常にネタバレ注意
小ネタ
 「んっ……」ライトが体をもぞもぞさせている。「どうした、ライト?」テントの中に
緩衝材を敷いていたファングが手を止めて尋ねた。テントは、この平原に不時着してから
データ通信端末で購入したものだ。中古テントで、ところどころ色が禿げていた。

 「いや、……背中が痒いんだ」言うそばから身震いをさせている。「脱げばいいじゃね
ーか」もっともだ。ニット地のノースリーブの上に平織りの固めのジャケットが背中を覆
っていては、なかなか掻けるものではない。

 「それはそうだが」それでもライトは渋る。「なんだ?届かないんなら私が掻いてやる
ぞ」敷き詰めた緩衝材をぽんぽんと叩いてなだらかにする。「そうじゃなくってだな」申
し出を断るライトを無視して、ファングは後ろからライトの肩を掴む。次の瞬間、ライト
の口から洩れたのは、いつもよりワントーン高い小さな悲鳴だった。背中に何か入り込ん
だのだ。振り向くとファングが腰から右手を突っ込んでいる。

 「や、やめ……」ライトの制止も聞かず、ファングは入れた腕で背中をまさぐる。「こ
こか?」ごそごそ動かしていると何かに指先が触れた。「い、痛っ」その声でファングは
驚き、背中から手を抜いた。

 「……血?触っただけ、だよな?」指先がうっすら赤黒く染まっている。ファングは自
分が力を入れて引っ掻いたのかと気が気ではなかった。ライトの方は、うつむいて座り込
んでいる。「ライト、やっぱり脱ぎな」ライトは答えようと口を動かしたがパクパクさせ
るだけで声にはならない。背中から半ば強引に抑えつけられ、上着のホックやらなんやら、
とにかく上半身を覆っているものを引きはがされた。

 「どったのー?」男性陣が全く役に立たず、そちらのテントの手伝いをしていたヴァニ
ラがライトたちのいるテントを覗き込んだ。騒ぎを聞きつけて気になって来てみたのだと
言う。

 「うわ、ひどいね……それ」ライトの背中を見て、ヴァニラは感想を漏らした。「そん
なにひどいか?」当のライトはトーンダウンした声を出してうなだれている。背中の上半
分には十か所ほどの小さな赤い点が咲いていた。「そりゃ、痒いはずだわ。なんでこんな
になるまで放置してたんだ」ファングは呆れながらそれを眺めている。

 「水浴びの時に蚊に食われただけだ。すぐ治る」そう答えながらファングの放った服に
手を伸ばす。「そうじゃねえだろ。こんだけ血とか膿とか出てるのに、普通の蚊だとでも
思ってんのか?」ライトの手が止まる。「は?血?」素っ頓狂な返答をするライトに、フ
ァングとヴァニラは説明してやった。

 なんでも、ライトを刺したのは水棲の蚊で人の皮下に卵を産みつける種類らしい。刺さ
れた直後は痒みがあるだけだが、数日経つと卵が皮膚を溶かして養分にし始める。ところ
どころ膿が出ている部分は、小さな幼虫が生まれている証だ。水深のやや深い所に住み、
ファングとヴァニラに投げ入れられた時に刺されたのだろうという意見が一致した。

 「とりあえず、月花の種があるからそれで軟膏作るね」ヴァニラの提案でそうなった。
ライトの方は、数日前に刺された時の状態が割と気味が悪かったようで治るまで放置し
ているつもりだったようだ。「ほら、動くなよ」ファングはライトをうつぶせに寝かせ
て上から肩を両膝で押さえつけた。

 長針と小刀で幼虫や卵を抜き出すのは、ひと仕事だった。ライトは背中を切り開かれ
る痛みに耐えなければならなかったし、ファングはそんなライトを抑えつけつつ慎重に
作業しなければならなかったからだ。特に幼虫は尻尾の先ほど残しただけでも再生して
しまう。

 ようやくその作業を終えた頃、ヴァニラも軟膏を持って現れたがその薬も結構なもの
だった。いい匂いはするものの錯乱作用を持ち、よくしみる。慣れないライトには刺激
が強すぎたのかもしれない。痛みと錯乱で気絶に追い込まれ、そのまま日が暮れた。
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